-はじめに
みなさんもご存じかと思いますが、バレエは様々な筋肉を使う踊りです。その中でも、「体幹」をピックアップしていきます。「体幹」は、頭と手足を除いた胴体部分を総称した呼び方で、腹筋や胸・背中などの大きな筋肉、肩関節・股関節の小さな筋肉全てのことを指します。今回は、その「体幹」を効果的に鍛えるトレーニング方法をご紹介します。
◼︎なぜバレエに体幹トレーニングが必要なのか?
(1)美しい姿勢と動きを支える体幹の役割
バレリーナは美しい姿勢が求められ、それには引き上げが重要とされています。体幹は冒頭で軽く説明しましたが、手足を抜いた体を支える筋肉で、体幹が弱い=上半身の筋力が低下していて、骨を正しい位置で維持できないため、猫背、反り腰といった不良姿勢になりやすいです。引き上げのためには、体幹(インナーマッスル)は、姿勢を美しく長時間保つための主力の筋肉となります。
(2)バランス力の向上がバレエパフォーマンスを変える
バレエを華麗に踊るためには、バランス力も重要とされています。この力を鍛えることで、踊りやすさ、踊りの正確性が表れます。
(3)怪我を防ぐための基礎筋力作り
体幹を鍛えることで、効率的でスムーズに動く能力を高めることができます。基礎筋力を上げることで、動作の軸が安定し、バレエのパフォーマンスが向上し、怪我防止にもつながります。
◼︎バレエに効果的な体幹トレーニングのポイント
(1)「内側の筋肉」を意識することの重要性
筋肉は大きく分けると、「インナーマッスル」と「アウターマッスル」に分かれます。アウターマッスルのほうを先に鍛えてしまうと、インナーマッスルより前に収縮することで、インナーマッスルがはたらきにくくなってしまいます。よって、体の内側の筋肉から鍛えることが重要となっています。
(2)呼吸と動きを連動させるコツ
体幹トレーニングでは、内側の筋肉を鍛えることが目的であり、手足に力入ることは、トレーニングの効果を半減させてしまいます。体幹を鍛える際に効果的な方法が、「ドローイン呼吸法」です。トレーニングに入る前に、この呼吸法をマスターすることで、体幹の4つのインナーマッスルが鍛えられ、体の軸を安定させられます。
まずはその「ドローイン呼吸法」を使って、呼吸のコツをつかみましょう。
<ドローイン呼吸法>
1.「息を吐く」時にお腹をへこませます
2.「息を吸う」時にお腹を膨らませます
この時のポイントとして、肋骨が広がるイメージでゆっくり行うことです。
呼吸が掴めたら、トレーニングと連動していきます。
「動き出し」で息を吐き、合間に息を吸うことで莫大な効果が得られます。
こちらの動画も是非参照してみてください。
(3)自宅でも簡単に取り入れられるトレーニング
自宅でも簡単にできるトレーニングとして、先程呼吸法としてご紹介しましたが、「ドローイン」という名前でトレーニングとしても活用できます。「寝る・座る・立つ」どんな状態の時でもできるので、やってみてくさい!アレンジ方法もご紹介しますので、そちらもぜひ!
<アレンジ法>
・歯磨きやドライヤー+片足立ち
・座りながら作業+ドローイン などなど
◼︎バレエに特化した体幹トレーニングの具体例
(1)「プランク」で基礎の体幹を強化
「プランク」には基本の3種類があります。フロントプランク:体幹の鍛え方としてよく紹介される、基本的なトレーニングポーズ。広範囲の筋肉を鍛えることができます。
サイドプランク:横向きの姿勢で取り組みます。主に脂肪を落としにくい腹斜筋を鍛えます。
ヒップリフト:股関節のインナーマッスルとお尻・太もも裏を鍛える体幹トレーニングになります。
まずは最初に紹介したフロントプランクで基礎筋力を上げていきましょう。サイドプランクは床と接地している範囲が小さいため、バランスを取りにくいプランクです。フロントプランクで体幹を安定させて行う次のステップとして利用してみてください。
(2)「サイドプランク」でバランス力を高める
サイドプランクは、腹斜筋といって脇腹にある筋肉を鍛えるプランクになります。脇腹に負荷をかけて、お腹周りの筋肉をバランスよく鍛えられます。先にも説明したように、サイドプランクは、体が地面と接地している面積が小さいため、バランス力を鍛えることもできます。
(3)「ピラティス風ロールアップ」で柔軟性と筋力を同時に鍛える
ロールアップとは、腹部のアウターマッスルとインナーマッスルを同時に鍛えることができるトレーニングです。このトレーニング内容は、
1.ピラティスマットの上に仰向けで寝転ぶ
2.腕を頭の上にまっすぐ伸ばす
3.顎を引き、頭をゆっくり上げていく(息を吸う)
※ポイント:腹筋の力だけを使い、上半身を起こす
4.腕を前へ動かしながら上半身を上げていく(息を吐く)
5.長座前屈のような姿勢になる
起きる上がる際、背骨を1つずつ丸めていくイメージで、背中の柔軟性を意識することも重要です!
ただ、腹筋力がなかったり、背中の柔軟性がないとなかなかできないトレーニング法になるため、「ロールダウン」というロールアップとは逆の手順で行うトレーニングやセラバンドやクッション、タオルといった補助器具を使って行うとよいでしょう。
◼︎日常生活に取り入れるバレエ体幹トレーニング
(1)時間がないときでもできる5分間ルーチン
1日たった5分でできる体幹トレーニングをご紹介します!①四つん這いになる
※ポイント:手は肩幅、脚は腰幅。肩の下に手首、股関節の下に膝の位置づけ。背中は平らに。
②右腕左足を床から持ち上げる
ポイント:一直線を意識。お腹にグッと力を入れましょう。
③②と逆のことを行う
※※呼吸は止めないこと!!
簡単で短い時間でできます!ぜひやってみてください!
(2)デスクワーク中でもできる簡単なエクササイズ
いくつか簡単にできるエクササイズをご紹介します。①姿勢よくデスクワーク
イスに深く腰掛け、お尻と膝がそれぞれ90°になるように座りましょう。足裏全体が床についていることも大切です。
②背中周りのストレッチ
背中を丸めて行うストレッチ。ゆっくり呼吸をしながら、20~30秒キープ。不良姿勢が改善され、呼吸もしやすくなります。
③首のストレッチ
親指以外の4本で頭の後ろを掴み、親指で押したり、首と肩の力を抜いて首を回す。
④かかと・つまさき上げ
(3) トレーニングを続けるためのモチベーションアップのコツ
皆さんのモチベーションが上がらない原因はなんでしょうか?目的が明確ではない、日常生活で疲れていて余裕がない、変化が感じられない、様々な理由があると思います。
●目的が明確でない
目的が明確でない場合は、例えば「あるバレエの作品をバレエダンサーの〇〇さんのように踊りたい」と長期目標を立て、その目標達成のために、逆算して小さい目標を作ると効果があると思います。
●生活に余裕をつくる
仕事が忙しくて、家事・育児に追われている、学業が忙しいなどなど、人によって日常の忙しさがあると思います。一度、ご自身の生活を振り返ってみて、改善できることがあれば変えてみると、時間に余裕ができ、モチベーションアップにつながります。
●トレーニング仲間を作る
孤独でやるよりもみんなでやると切磋琢磨できます。一緒にレッスンしている方やご家族の方を巻、周りの人、SNSを巻き込むとやる気も俄然上がります!
ほかにも好きな音楽やラジオを聴いたり、ご褒美をつくったりするとトレーニングのモチベーションアップにつながると思いますので、ご自身に合ったものを見つけてみてください。
◼︎体幹を鍛えた後の変化と応用
(1) ピルエットやジャンプで実感できる効果
ピルエットでは、体幹を付けることで回転中の胴体を安定させるため、適切な位置とバランスを維持できます。また、ジャンプでは踏切りや着地の際、体幹の筋肉が身体を安定させるため、脚や腰への過度な負担を軽減します。このように安定した体の動きを実感できるようになるでしょう。
(2)レッスン中の意識が変わるポイント
バレエでの身体の使い方が分かってくるようになると思います。身体のバランスが整うため、どこをどのように身体を動かすのかを理解することができ、レッスンが更に楽しんでいただけるかと思います。
(3)体幹トレーニングで得られるバレエ以外のメリット
体幹トレーニングはパフォーマンスの向上だけでなく、怪我や転倒の予防、体系維持、内臓の働きが良くなる、腰痛の予防・改善など、そもそもの身体の健康に繋がります。体幹トレーニングをすることで、様々なメリットが得られます!