バレエ音楽【チャイコフスキー】とは|NOAバレエ教室

バレエでよく使用される曲のなかで、チャイコフスキーが作曲した曲が多数あります。皆さんが必ず聞いた事がある曲も、実はチャイコフスキーが作曲した曲だったりもします。
ここではチャイコフスキーの魅力をご紹介していきます。


■ チャイコフスキーとは


ロシアの作曲家。国民楽派に対して、ロシアの西欧派を代表。西欧音楽のロマン派の技法をロシアの土壌の上に発展させました。作品に、ピアノ協奏曲、交響曲「悲愴」、バレエ音楽「白鳥の湖」「眠りの森の美女」「胡桃 (くるみ) 割り人形」などがあります。


■ チャイコフスキーの音楽の特徴


チャイコフスキーの音楽の特徴は、すべての音楽でメロディーラインが美しく、口ずさむことができるほどです。メロディーの天才であるといってよく、彼が民衆に愛され続けてきた最大の理由だと思います。彼は民謡を愛し、ロシア的な心情をもった人でした。


彼の音楽は、多くの場合がロシア的であり、広大なロシア平原、厳しい北国、ロシアの素朴な農民の様子などを連想させています。ロシア的な真実を彷彿させ、同時代の、トルストイ、ドストエフスキー、ツルゲーネフなどのロシアの文豪と軌を一にしています。ロシアの偉大な芸術家の一人です。
彼の管弦楽は、実に多彩で雄弁です。曲想やメロディーも湧き上がるような豊かで、抒情的なものと、男性的で激しいものが、両立しています。決して軟弱に流れる音楽ではありません。


■ 「チャイコフスキー 三大バレエ」といえば?


(1) 白鳥の湖


【序奏】
オデットが花畑で花を摘んでいるところへ悪魔ロッドバルトが現れ、オデットを白鳥に変えてしまう。


【第1幕】
今日はジークフリート王子の21歳の誕生日。お城の前庭には王子の友人が集まり、祝福の踊りを踊っている。そこへ王子の母が現われ、明日の王宮の舞踏会で花嫁を選ぶように言う。まだ結婚したくない王子は物思いにふけり、友人達と共に白鳥が住む湖へ狩りに向かう。


【第2幕】
白鳥たちが泳いでいるところへ月の光が出ると、たちまち娘たちの姿に変わっていった。王子は、その中でひときわ美しいオデット姫に惹きつけられる。彼女は夜だけ人間の姿に戻ることができ、この呪いを解くただひとつの方法は、まだ誰も愛したことのない男性に愛を誓ってもらうことだと言う。それを知った王子は、明日の舞踏会に来るようオデットに言う。


【第3幕】
世界各国の踊りが繰り広げられているところへ、悪魔の娘オディールが現われる。王子は彼女を花嫁として選ぶが、それは魔法を使ってオデットに化けていたオディールだった。その様子を見ていたオデットの仲間の白鳥は、王子が騙されていることをオデットに伝えるため湖へ走り去る。悪魔の仕業に気づいた王子は嘆き、急いでオデットのもとへ向かう。


【第4幕】
破られた愛の誓いを嘆くオデットに王子は許しを請う。そこへ現われた悪魔に、王子はかなわぬまでもと跳びかかった。激しい戦いの末、王子は悪魔を討ち破るが、白鳥たちの呪いは解けない。絶望した王子とオデットは湖に身を投げて来世で結ばれる。


※白鳥の湖は、振付家や使用する版によってあらすじに異なる点が多く、序奏部は省かれることも多い。ラストもハッピーエンドとなるか悲劇で終わるか等、さまざまです。


(2) 眠れる森の美女


【プロローグ】
フロレスタン24世の娘、オーロラ姫の誕生により、盛大な洗礼の式典が行われている。6人の妖精たちの一行が、彼女の名付け親となるべく招待された。夾竹桃の精、三色ヒルガオの精、パンくずの精、歌うカナリアの精、激しさの精、そして一番偉い善の精、リラの精である。まず国王が妖精たちに贈り物をし、妖精たちがそれぞれオーロラ姫に授け物をする。
その時、邪悪な妖精カラボスがやってくる。カラボスは自分が洗礼に招待されなかったことに怒り狂い、オーロラ姫に次のような呪いをかける。


「オーロラ姫は、20回目(改訂版では16回目)の誕生日に、彼女の指を刺して死ぬでしょう。」
しかし幸運にも、リラの精だけはまだ姫に何も授けていなかった。リラの精は言った。
「カラボスの呪いの力は強すぎて、完全に取り払うことはできません。したがって姫は指を刺すでしょうが、死ぬことはありません。100年間の眠りについたあと、いつか王子様がやってきて、彼の口づけによって目を覚ますでしょう。」


【第1幕】
オーロラ姫はすくすくと成長し、20歳(16歳)の誕生日を迎えた。その誕生日に編み物をしている娘たちを見て国王は激怒する。オーロラ姫を守るために編み物・縫い物は禁止していたためだ。しかしめでたい祝いの日なので国王は怒りを鎮めて祝宴を始める。
オーロラ姫には4人の求婚者がおり、彼らがバラを姫に手渡したそのすぐ後、姫は何者かから糸をつむぐ紡錘(スピンドル)を贈られる。彼女は尖ったものに気をつけるようにという両親の忠告にも関わらず、それを持ったまま楽しそうに踊る。そして、誤って指を刺してしまう。
実は、邪悪な妖精カラボスが求婚者の一人に化けていたのだ。カラボスはすぐに邪悪な本性を明かし、驚く賓客の前で勝ち誇りながら姿を消す。同時にリラの精が約束通りやってきて、王と王妃、そして賓客たちに、オーロラ姫は死ぬのではなく眠りにつくのだということを思い出させる。リラの精は城にいた全員に眠りの魔法をかける。オーロラ姫が目覚めるその時に、目を覚ますように、と。


【第2幕】
それから100年が経った頃、デジレ王子が一行を率いて狩りを行っていた。王子は狩りが楽しくなかったため、1人になりたいと申し出て一行から離れる。そこに突然リラの精が現れて、オーロラ姫の幻を見せられた王子はその美しさの虜となる。王子はリラの精にオーロラ姫の元へ連れて行くよう頼み込み、今や太いツルが伸び放題でからみついている城にたどり着く。リラの精はオーロラ姫の名づけ親だが、デジレ王子の名付け親でもあった。
王子は城の中で眠っているオーロラ姫を発見し、王子のキスによってオーロラ姫は目を覚ます。彼女が目を覚ましたため、城にいた全員が目を覚ます。王子は姫への愛を告白し、結婚を申し込む。


【第3幕】
婚礼の仕度は整った。祝祭の日にさまざまな妖精たちが招かれている。結婚を祝福するのは、金の精、銀の精、サファイアの精、ダイヤモンドの精である。リラの精もカラボスも出席している。「長靴をはいた猫」や「白猫」などのおとぎ話の主人公たちも来賓として居合わせている。
華麗なダンスが次々に踊られる。4人の妖精のパ・ド・カトル、2匹の猫のダンス、青い鳥とフロリナ王女のパ・ド・ドゥ、赤ずきんちゃんとおおかみの踊り、シンデレラ姫とフォルチュネ王子のダンスが披露され、オーロラ姫とデジレ王子のパ・ド・ドゥが続き、最後にマズルカで締め括られる。オーロラ姫と王子は結婚し、妖精たちを讃えるアポテオーズの中で人々は妖精たちに感謝を表し、リラの精やカラボスなどの妖精たちが人々を見守るうちにバレエは終幕となる。


(3)くるみ割り人形


【プロローグ】
ある国で可愛い王子が誕生し、それを祝う豪華で華やかなパーティが行われます。しかし、そのパーティの最中に誰かが、わざとではなく誤って、ねずみの女王を踏みつけてしまうのです。怒った女王は、誕生した王子に呪いをかけ、くるみ割り人形にしてしまいました。


【第1幕】
クリスマス・イブの夜、少女クララの家の大広間では、盛大なクリスマスパーティーが行われています。子どもたちや客人が楽しく遊んだり踊ったりしている広間には、大きなクリスマスツリーがあり、そこにドロッセルマイヤーという人物がやってきます。彼はクララの風変わりな叔父さんで、おもちゃのプレゼントをあげたり、変わった人形を見せたりして、子どもたちを夢中にさせました。クララももちろんドロッセルマイヤーからプレゼントをもらいますが、彼女へのプレゼントは、可愛らしくないくるみ割り人形。
でも、心優しいクララは、彼女の弟やその友達が、どんなに彼女をからかっても、そのくるみ割り人形を大切に大切に扱うのです。


パーティも終わり、みんなが寝静まった深夜、時計の鐘の音とともに、クララの体は人形くらいに小さくなってしまいます。そしてそこに、ねずみの王様とその手下たちがやってきて、くるみ割り人形と仲間の兵隊人形たちと戦いはじめます。息をのんでクララが見守っていると、くるみ割り人形がねずみの王様に負けてしまいそうになります。堪え切れなくなったクララは、自分が履いていたスリッパをねずみの王様に投げつけ、くるみ割り人形を救いました。クララにお礼を言うくるみ割り人形は、いつの間にか美しい王子へと姿を変えています。美しい王子となったくるみ割り人形は、優しく勇敢なクララを自分の国へ案内するとクララに告げました。


【第2幕】
くるみ割り人形であった王子の国途中、クララと王子は、雪の国を通ります。雪の国では、雪の女王や雪の精たちが、舞い踊りながら彼らを見送りました。くるみ割り人形であった王子の国は、お菓子の国です。帰ってきた王子と王子の客人であるクララを金平糖の精や、チョコレートの精、コーヒーの精、お茶の精などが歓待します。華やかなお菓子の国での時間を楽しんだクララは、家族が寝ている間に、くるみ割り人形であった王子に送られて、家に帰ってきました。クララは、自分の冒険が夢ではないことを確信しながら、眠りにつきます。


■ チャイコフスキーの有名バリエーション


【オディール(黒鳥)のバリエーション】
作品名は「白鳥の湖」です。
第3幕、王宮の舞踏会の場面です。
特徴として、王子を惑わすような高い表現力、羽を表現した手の動きが特徴です。
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【オーロラ姫のバリエーション】
作品名は「眠れる森の美女」です。
第3幕 オーロラ姫の結婚式の場面です。
特徴として、高貴な雰囲気、ゆっくりとしたテンポで、様々なパが入ります。
お姫様の踊りに挑戦したい方、落ち着いた静かな雰囲気が好きな方、いろんなパを練習したい方はオススメです。
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【金平糖の精のバリエーション】
作品名は「くるみ割り人形」です。
第2幕 お菓子の国の場面です。
特徴は、金平糖の凹凸を表現したような振付、斜めに進むディアゴナルでの足さばきが特徴です。
穏やかな曲調のバリエーションが踊りたい方、丁寧に正確に踊ることが得意な方はオススメです。
動画はこちら


-終わりに


いかがでしたか?聞いたことはありましたか?
代表的なものを取り上げましたがご紹介しきれない程たくさんのチャイコフスキーの曲があります。そして様々なヴァリエーションもあり、難易度も曲により全く変わってきます。
ヴァリエーションではありませんが、眠れる森の美女では、第一幕に 村人の大ワルツ(別名「ガーランド・ワルツ」) という場面があります。
ワルツと言えばこれ!というほど有名なワルツですので是非こちらも知っておきましょう。
ここで少し余談を。
世界的に有名なダンサーで「アリーナ・コジョカル」という方がいます。
知らない方はぜひ知っておいて頂きたい方の一人です。


https://ja.wikipedia.org/wiki/アリーナ・コジョカル


10年ほど前、東京文化会館で公演された、東京バレエ団「くるみ割り人形」で主役クララを演じられたこともあります。
チャイコフスキーの曲は親しみやすく、聞いた事があるでしょう。
聞いた事がある曲だからこそ、バレエも親しみやすいはずです。
まだご覧になった事が無い方は、是非一度、チャイコフスキーの曲が使用されているバレエを観劇してみて下さい。