-はじめに
皆さんはエスメラルダをご存じですか?バレエをされている方は、コンクール等でヴァリエーションを選択される方が多く、存じ上げている方は多いと思われます。
なぜ多いのか、また知らない方にもどのような作品なのか、今回はエスメラルダについてご説明していきます。
■ バレエ作品エスメラルダとは
エスメラルダ(フランス語: La Esmeralda)は、1831年にヴィクトル・ユーゴーが発表した小説『ノートルダム・ド・パリ』に着想して作られた3幕5場のバレエ作品です。チェーザレ・プーニの曲にジュール・ペローが振付し、ウィリアム・グリーブが美術、コペール夫人が衣装を担当しました。1844年3月9日、ロンドンのハー・マジェスティーズ劇場バレエ団により初演されました。
今日では、ロシア、東ヨーロッパ、そしてアメリカのニュージャージー州以外で全幕の上演が行われることはほとんどありません。
ニュージャージー・バレエ団は2004年に米国で初めて全幕を上演しました。西欧諸国のバレエ団のほとんどは、エスメラルダが登場するパ・ド・ドゥおよびパ・ド・シスの二場面と、「ディアナとアクティオンのパ・ド・ドゥ」しか上演しません。なお、ディアナとアクティオンのパ・ド・ドゥはしばしば1886年にマリウス・プティパがマリインスキー劇場での再演にあたって追加したものだと紹介されるが正しくなく、実際は1935年にアグリッピナ・ワガノワがプティパ振付・プーニおよびドリゴ作曲の別のバレエ作品『カンダウレス王』(1868年)からアレンジを加えて取り入れたものです。このうちディアナのヴァリエーションは、現在ではバレエ・コンクールにおいて参加者が演目として取り上げることも多いです。
■ バレエ作品エスメラルダの登場人物
・エスメラルダ:美しいジプシーの娘。カジモド、フロロ、フェビュスの3人から思いを寄せられるが、本人が思いを寄せているフェビュスには婚約者がいる。
・カジモド:ノートルダム大聖堂の前に捨てられていたところを聖職者フロロに拾われた醜い外見を持つ男。成長し、ノートルダムの鐘つき役となっている。
・フロロ:カジモドを拾った聖職者。神に仕える身でありながらエスメラルダに思いを寄せ、苦悩する。
・フェビュス:フロロの差し金でカジモドに連れ去られそうになったエスメラルダを助けた夜警隊の隊長。エスメラルダと恋に落ちるが、実は婚約者がいる。
・フルール:フェビュスの婚約者。
・クロパン:悪党浮浪者グループのリーダー
・グランゴワール:詩人。クロパンにより絞首刑になりかけたところをエスメラルダの機転で助けられ、ジプシーの掟に従って仮の夫婦となる。
■ エスメラルダのあらすじ
ローランド・ジョン・ワイリーによるあらすじは以下の通りですが、バレエにおいては異なる人物により幾度も改訂されており、それぞれの内容は必ずしも一致しません。
美しいジプシーの少女エスメラルダは、詩人ピエール・グリンゴワールがジプシーの王に処刑されるのを防ぐため、グリンゴワールと結婚する。グリンゴワールはエスメラルダに心奪われるが、エスメラルダはこの結婚はあくまでグリンゴワールの命を救うための仮初めのものだとはっきり言い放つ。
一方、グリンゴワールのみならずノートルダム大聖堂の助祭長クロード・フロロもエスメラルダに執心していた。フロロの熱の上げようは危険なほどで、醜い下男カジモドにエスメラルダを誘拐するよう命じる。カジモドは通りでエスメラルダに襲いかかるが、エスメラルダはフェビュス率いる衛兵隊に助けられ、カジモドは捕らえられる。フェビュスはカジモドを拷問にかけようとするが、エスメラルダは自分を襲ったカジモドを釈放してやるよう願い、カジモドはエスメラルダの優しさに深く感動する。
エスメラルダはフェビュスに想いを寄せ、フェビュスもまたエスメラルダに魅了されて婚約者フルール・ド・リスから贈られたスカーフをエスメラルダに与えてしまう。
翌日、フルール・ド・リスとその母親はフェビュスとの婚約を祝う壮大な祝賀パーティーを開くが、当のフェビュスはエスメラルダのことで頭がいっぱいであった。エスメラルダはパーティーの余興を演じるために呼ばれていたが、会場でフルール・ド・リスの婚約者がフェビュスであることを知って心を痛める。
一方のフルール・ド・リスは、自分がフェビュスに贈ったスカーフをエスメラルダが身に着けていることに気づき、フェビュスが他の娘と恋に落ちたことを知る。
フルール・ド・リスは大いに怒って婚約を破棄し、フェビュスはエスメラルダと共に去ってゆく。二人は酒場で愛を誓い合うが、それを居合わせたフロロに盗み聞きされてしまう。嫉妬に狂ったフロロは、エスメラルダの部屋から盗み出していた短剣を持って二人の背後から忍び寄り、フェビュスを突き刺す。
フロロは警吏を呼び、倒れたフェビュスと凶器の短剣を見せる。短剣がエスメラルダのものだと分かると、エスメラルダはフェビュス殺害犯として警吏に連行され、死刑を宣告される。
翌朝の夜明けにエスメラルダはフェビュス殺害の廉で絞首刑に処されることになった。エスメラルダの友人やグリンゴワールがやってきてエスメラルダに別れを告げ、フロロは勝ち誇っている。エスメラルダが絞首台に引き出されるが、そこに死んだはずのフェビュスが現れる。実は刺し傷は致命傷ではなかったのである。フェビュスは真犯人はフロロであり、エスメラルダはまったくの無実だと宣言する。悪事が露見したフロロは短剣を取り、フェビュスたちを亡き者にしようとするが、カジモドに奪われて刺し殺される。こうしてエスメラルダとフェビュスは幸福のうちに再会する。
■ エスメラルダの衣装や音楽
エスメラルダの衣装は、赤だったり黒だったり、緑だったり、わりと色のバリエーションがあるので、好きな色を選ぶかたが結構多いです。エスメラルダの曲を作ったのはプーニという作曲家ですが、1844年、プーニがエスメラルダを作曲し、1858年、エスメラルダの曲を海賊にひっつけました。
同じ曲が使いまわされている演目は他にもありますが、エスメラルダ自体にも「ディアナとアクテオン」の曲が追加されています。
■ タンバリンが印象的なエスメラルダのヴァリエーション
エスメラルダのヴァリエーションはコンクールでも人気で、タンバリンなど小道具を使う場合があり有名です。本来タンバリン等は使用してなく、バレエのヴァリエーション用に追加されました。
1982年にベン・スティーヴンソンという人により振付けられた、全く別の新しいヴァリエーションなので、古典のエスメラルダには無かっただけのようです。
なので通常、原典に近い演出のエスメラルダにはタンバリンのヴァリエーションは入っていません。
-終わりに
エスメラルダという全幕ものもあれば、ヴァリエーションが「海賊」の中にあったり、「ダイアナとアクティオン」と呼ばれていたりと色々複雑のように思える作品ですが、そんなことはありません。ヴァリエーションでは、美しさと妖艶さの中に、どこか悲壮感が漂う内容になっているので、踊られている方のスキルがとても注目されるところですね。
是非皆さんも注目して見てみてはいかがでしょうか。