まずはじめに、ヴァリエーションとはなにかご存知でしょうか。見聞きしたことは何度かあったとしてもなんとなくの雰囲気で理解している方が多く、意味まで深く考えることは中々ないのではないでしょうか。
意味としては物事の変化や物の変型、変種、変奏曲などといった意味を持っているため、ヴァリエーション=変化と捉えることができます。ちなみにバレエで使うヴァリエーションとは舞台の真ん中で「一人で踊る」ことを指し、見せ場でもあります。有名なもので言えばパキータはもちろん白鳥の湖やドンキホーテなどが挙げられます。演目にもよりますが大体が1~2分半ほどの時間があり、1分だけでもとても体力的にきついのが特徴です。
バレエの作品としてはアントレ→アダージオやヴァリエーション、パドドゥなど→コーダという流れで大体は構成が組まれています。
■ バレエ作品「パキータ」とは
時代は1769~1821年、フランス人ナポレオンの占領下にあるスペインを舞台にした全2幕の作品です。ナポレオン軍占領下のスペインでジプシーの娘パキータとフランス軍将校リュシアンの身分の違う男女が恋に落ち、2人の恋の行方が繰り広げられています。パドトロワというフランス語の数詞を使った言葉がありますが、バレエでは三人で踊るという意味を持っています。子供から大人まで幅広く踊れる作品であり、初めてパドトロワを踊る際に選ばれることが多いため、パドトロワといえばパキータを思い浮かべる方も多くいます。特徴としては基礎的な要素が一番影響してくる作品になります。男性1人、女性2人で踊りますが、3人が同じ動きをすることが多いため、正しいポジションができていないと統一感がなくなってしまいます。そのためパキータを踊りこむことにとって基礎が向上し協調性が身につくのです。
パキータは1846年パリで演じられたのが最初で、オペラ座が復活させました。バレエダンサーには階級があり、バレエ団の顔と言われるのがプリンシパルです。パリ・オペラ座ではエトワールと呼び名が異なりはしますが、プリンシパルと階級は同じでフランス語で星という意味を表します。パキータではパキータの結婚の喜びを表すソロの踊りとしても知られています。
■ パキータの登場人物
・パキータ ラマ(ジプシーの美しい娘)・リュシアン デルウィリ(フランスの伯爵)
・イニゴ(ジプシーの首領、フランス人をよく思っていない)
・ドン ロペス(スペイン人の地方監督、フランス人をよく思っていない)
・コント デルウィリ(リュシアンの父)
■ パキータのあらすじ
(1) 第1幕
知事ドン・ロペスは祖国を占領したフランス軍に対し非常に憎んでいました。ある日、記念碑建立を祝うための村祭が行われ、フランス軍一行がトゥロー渓谷を訪れました。一行の中にはフランス軍の将軍の息子、将校のリュシアンも同行していました。ジプシーたちも集まり、その中にパキータもいました。リュシアンはパキータに惹かれ、パキータもまたリュシアンに惹かれますが、パキータは身分の差が気になりリュシアンからの申し出を断ってしまいます。一方パキータに思いを寄せていたイニゴは惹かれあう二人に嫉妬をし、兼ねてからフランスに恨みを持ったドン・ロペスを筆頭にリュシアン殺害計画を企みます。
(2) 第2幕 第1場
パキータはドン・ロペスとイニゴが仮面を付けて現れ、殺害計画を立てているところを見ました。ジプシーの住かに訪れたリュシアンはイニゴに食事を勧められ、ワインを差し出されました。パキータはそれに毒が入ってることに気づき、イニゴのワインと交換をしました。気づいていないイニゴはそれを口にし、倒れます。その隙に二人は逃げ出し、無事脱出に成功をしました。
(3) 第2幕 第2場
上手く逃げ出すことができた二人はフランス将軍主催の舞踏会に参加します。パキータはそこにいたドン・ロペスを見てイニゴと一緒に殺害計画を立てた男だと気づき、告げ口をしたことによりドン・ロペスは連行されます。命を救ってくれたパキータに求婚をしますが、やはり身分の差が気になるパキータはそれを断ります。そんなとき、パキータの目には壁に飾られた肖像画が映ります。それはパキータが幼いころからずっと身につけていたロケットペンダントの中の肖像画と同じものだったのです。その肖像画の人物はリュシアンの伯父シャルル・デルヴィイーであり、実はパキータはその娘で二人はいとこだったのです。パキータの身分が明らかになり、身分の差を気にしなくてよくなった二人はめでたく結ばれます。
■ パキータの見どころは?テクニック・音楽・衣装
• 音楽はミンクス作曲の軽快で華やかなメロディ• 衣装はクラシック・チュチュにスペイン風の装飾
• テクニカルな回転技・ジャンプが盛り込まれ、上級者向け
見た目にも華やかで、観客を一気に引き込む力がある演目として、多くのダンサーが憧れる作品です。
■ パキータのヴァリエーションの種類
1881年にプティパによってリバイバル上演された際には1つのヴァリエーションしかありませんでしたが、1897年のエカテリーナⅡ世に挙げられたガラ公演でパキータが上演された際にソリスト(ソロを踊ることができるダンサー)たちが好きなヴァリエーションを踊ったことで5つのヴァリエーションが生まれました。この時にパドトロワも第1幕に、グランパ・クラシックとマズルカが最終幕に加えられました。その後、1902年にチェケッティのためのマリインスキー劇場でのフェアウェル公演でパキータが上演され、チェケッティの教え子たちが踊るために様々な演目の21種類のヴァリエーションが加えられ、現在に伝わっています。
■パキータがコンクールや発表会で人気の理由
バレエの発表会といえば衣装もとても印象的なのではないでしょうか。衣装が着たくて始める方も少なくはないと思います。女性なら1度は着てみたいと思うくらい印象的でとてもキラキラしていますよね。そんな衣装も演目によって様々ですし、場面によっても変わってきます。衣装からも物語や登場人物の心情を語っているのです。パキータのソリスト達のヴァリエーションは感情や人間ドラマを表現するのではなく、曲をいかにバレエテクニックを用いて表現するのが大事であるため、曲を聴いてその音に合わせてふさわしい動きをしています。パキータに出てくる第4ヴァリエーション、第5ヴァリエーションはよく発表会でも使われることが多いですが、このヴァリエーションも最初からあったわけではないのです。第4ヴァリエーションに関しては小学生の課題曲にもなっている為、子供から大人までにも親しまれ踊られるヴァリエーションになっています。