◾️はじめに
シェイクスピアが原作の「ロミオとジュリエット」は、本やミュージカル、映画で上映されるほど、多くの人や作品に影響を与える作品です。若者たちが障害に抗いながら愛を育む、ただその障害によって、2つの命が失われてしまう悲劇となっています。この壮大なストーリーは長く作品が愛される理由です。バレエでの「ロミオとジュリエット」は、その世界観を演出する音楽や振付が魅力的で、多くのファンから人気を博しています。
バレエでの「ロミオとジュリエット」は、映画やミュージカルと違い生のオーケストラの演奏で舞っているため、セリフがありません。ストーリーを知っておかないと、踊りで物語を作っているため、何の場面か、何を表現しているのか分からず、時が過ぎてしまいます。ストーリーを知っておけば、踊りや音楽からイメージを膨らませやすくなり、キャラクターの心情を感じ取りやすくなります。
◾️「ロミオとジュリエット」簡単な背景解説
・シェイクスピア原作の簡単な紹介(ヴェローナを舞台にした悲恋物語)
1595年頃に、イングランドの劇作家ウィリアム・シェイクスピアが書いたとされる戯曲「ロミオとジュリエット」。イタリア・ヴェローナを舞台に、長年対立する名家の息子と娘が恋に落ちるも、周囲によって破局し、自死を選んでしまうという恋愛悲劇です。・バレエ版が持つ特有の魅力
バレエには一つの作品に、様々な振付があります。ケネス・マクミランという振付家のものも有名ですし、ジョン・クランコは物語バレエの振付で頭角を現した一人です。バレエの物語作品は、セリフがない無言劇です。言葉がないというのは至難の業ではありますが、美しい振付や音楽表現によって、想像力を働かせながら、自由に物語を解釈できるという魅力があります。
◾️あらすじを5分で簡単解説
起(モンタギュー家とキャピュレット家の対立とロミオとジュリエットの出会い)
モンタギュー家(ロミオ)とキャピュレット家(ジュリエット)は犬猿の仲。しかし、キャピュレット家の仮面舞踏会にロミオが忍び込み、許嫁のパリス伯爵と踊っていたジュリエットと出会います。そこで二人はお互いに一目ぼれします。仮面舞踏会の後、またロミオはキャピュレット家に忍び込みます。ジュリエットは、バルコニーでなぜロミオが敵対するモンタギュー家の者なのか、「おお、ロミオ。なぜあなたはロミオなの。」と嘆いていたところでした。 そんなジュリエットを目の前に、ロミオは溢れんばかりの愛を伝えます。
承(二人が秘密裏に結婚する展開)
翌朝、ロミオはロレンス修道士にジュリエットとの結婚を申し込みに行きます。ロレンス修道士はモンタギューとキャピュレットが対立をやめること望んでいたため快諾し、ジュリエットの乳母に見守られながら、密かに2人で結婚式を挙げます。
転(ティボルトの死とロミオの追放、ジュリエットの危機)
しかし、そのあとロミオの親友マキューシオとベンヴォーリオが、ジュリエットのいとこ・ティボルトと争っているところに、ロミオが通りかかります。ロミオは争いを避けようとしますが、マキューシオとティボルトの激しい剣戟が始まってしまいます。その結果マキューシオが殺されしまい、その事実にロミオはティボルトを息絶えるまで斬りつけてしまいます。騒ぎに駆けつけたヴェローナの大公は、ロミオの追放を決めます。
結(悲劇的な結末と両家の和解)
ジュリエットはいとこの死とロミオの追放で、ひどく嘆いていました。ロレンス修道士は、事が収まったのを見計らい、ロミオとジュリエットの結婚を発表し、両家の和解を勧めたのち、ロミオを町へ戻そうと考えていました。
一方、ジュリエットの両親が、ジュリエットに婚約者パリス伯爵との結婚をするよう強く命じます。ジュリエットは当然、その提案を拒み続けます。それに起こったジュリエットの父は、勘当してしまいます。
ジュリエットはロレンス修道士に助けを求め、計画を練りました。それは、一時的に仮死になる薬を飲み、霊廟に葬られた後、薬が切れロミオが迎えに来て、ヴェローナを出るというものでした。
パリス伯爵との結婚式前夜、ジュリエットは計画を実行します。しかし、ロレンス修道士は計画についてロミオ宛に手紙を送っていましたが、検閲官に止められてしまっていたため、ロミオは従者から聞いたジュリエットが死んだということしか知りませんでした。
ロミオはジュリエットの霊廟に駆けつけます。そこで、パリス伯爵と出くわし、乱闘の末、パリス伯爵を殺してしまいます。
ロミオはジュリエットが息絶えていると思い込み、毒薬を飲んで自害します。ジュリエットは目を覚ましますが、息絶えたロミオを見て、ロミオが持っていた短剣で自害してしまいます。
ロレンス修道士は、事実を両家に伝えました。真相を知った両家はひどく悲しみ、お互いを許し、ついに和解したのでした。
◾️バレエ「ロミオとジュリエット」の見どころや注目シーン
〇騎士たちの踊り、貴族が舞踏会で踊る場面
大人数で踊りますし、衣装も素敵ですので、画の迫力があります。なにより音楽が重厚感あふれるものになっております。皆さんもお聞きしたことがある音楽だと思いますので、ぜひ一度見てみてください。
〇ロミオとジュリエット バルコニーのパ・ド・ドゥ
ロミオとジュリエットが愛を伝え合うシーン。絡み合う踊りが、二人の情熱的な愛を想像させてくれます。切なくもどうしても惹かれあってしまう踊りが印象的です。
〇決闘シーン
マキューシオ対ティボルトの対決は、軽やかな振付でありながら、周りのバレリーナの演技と音楽によって、迫力のある場面となっています。また、マキューシオが息絶えるところまでのシーンもコミカルながらも、これまた音楽で死に至るまでのマキューシオの心情が、想像力を掻き立てられるシーンです。ティボルトとロミオの決闘シーンは、とても激しく、マキューシオとの闘いと比べると、ロミオの激しい怒りを感じられ、とても興味深くなっています。
〇ラストシーン
当初は「死体は踊らないのでは」と賛否両論があったシーンだそうですが、作品の悲劇性を強調するシーンです。特にロミオがジュリエットの死に酷く嘆いているシーンは、感情がむき出してどうしようもできない感情が最大限表現されていると思います。
鑑賞時のポイントや楽しみ方のヒント
一つ一つのシーンで自由に縛られることなく、自身の最大限の想像力を使って、鑑賞を楽しんでみてください。音楽は生のオーケストラで演奏されているため、重厚感のある演奏が楽しめると思います。
◾️バレエ「ロミオとジュリエット」をさらに楽しむために
おすすめの映像作品や公演情報の調べ方
Youtubeやアマゾンプライムなどでも映像作品が見られますし、英国バレエ団の公式サイトやブログ等をチェックしてもらえると、最新の公演情報が得られます。
音楽や振付家、代表的なダンサーを簡単に紹介
ロミオとジュリエットの音楽は、ソ連の作曲家セルゲイ・プロコフィエフが作曲しました。振付家ラヴロフスキーと共に作り上げました。振付家では、先に述べたようにジョン・クランコという人物がいます。ほぼ形を変えず、今もなお踊り続けられています。クランコは、1961~1973年、バレエ団の芸術監督・振付家として活躍していました。その実力は、そこまで有名でなかったバレエ団を一流にするほどのプロデュース力を持っているほどでした。
ラヴロフスキーからクランコへ、クランコからマクミランへというように、振付は引き継がれています。
ダンサーはたくさんいますが、最近だと、ジュリエット役でアナ=ローズ・オサリバン、ロミオ役でマルセリーノ・サンベという史上2番目黒人プリンシパルダンサーがいます。二人は長いパートナーシップを築いているため、その相性の良さが演技にも出ています。
◾️まとめ
「ロミオとジュリエット」の魅力や感動ポイントを再確認若い2人が、障壁を超え愛を掴もうとするも、無残に命を絶ってしまう恋愛悲劇。切ないストーリーで今の社会に訴えかけてくるストーリーと、それ表現するバレエダンサー、音楽。それらが合わさったバレエの「ロミオとジュリエット」は、見る人によって違う感じ方を持たせてくれる魅力があります。